フロム・ソフトウェアの宮崎英高『エルデンリング』成功の秘訣とは?

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累計販売本数2500万本を達成し、新たに発売されたDLC 「SHADOW OF THE ERDTREE」によりさらに人気が加速している『ELDEN RING(エルデンリング)』

今回は、そんな『エルデンリング』成功の秘訣と宮崎英高氏の今後の方針についての記事となります。

宮崎英高とフロムソフトウェアの進化

フロムソフトウェアの社長、宮崎英高氏は、過去10年で大きな変化を遂げました。2014年5月、彼はフロムソフトウェアの社長に就任し、『デモンズソウル』(2009年)、『ダークソウル』(2011年)、『ブラッドボーン』(2015年)など、自身が監督を務めたダークファンタジーのヒット作を生み出してきました。

当時、フロムソフトウェアのゲームは批評家から高い評価を受けていましたが、数百万本を売り上げる程度であり、巨大なベストセラーとは言えませんでした。

しかし、2022年にリリースされた『エルデンリング』は、ファンタジー作家ジョージ・R・R・マーティンとのコラボレーションによるもので、宮崎氏の傑作とされるだけでなく、これまでで最も人気のある作品となり、2500万本を売り上げました。

フロムソフトウェアはもはやカルト的なヒット作を作るニッチなメーカーではなく、本物のブロックバスターの拠点となったのです​。

エルデンリングの成功と宮崎英高の見解

この成功を受けた上で宮崎氏は「エルデンリングは成功と批評の面で一際特別な存在でしたが、私たちが会社として心がけているのは、それが今後のゲームでも再び起こるとは決して仮定しないことです」と、ロサンゼルスでのインタビューで語っています。

宮崎氏「その保守的な見通しを許すことで、失敗する余地が生まれ、それがより良いゲームと意思決定につながります。逆説的に、そのヒットを生み出さないという仮定が、私たちのゲームデザインを支援しているのです

宮崎英高のゲームデザイン哲学とアプローチ

挑戦と達成感

宮崎英高氏のゲームデザインの中核には、「挑戦と達成感」というテーマがあります。彼のゲームは、その難易度の高さで知られていますが、それは単にプレイヤーを苦しめるためではなく、困難を乗り越えたときの達成感を強調するためです。

宮崎氏は「ゲームの難易度を下げれば、より多くの人が楽しめるかもしれないが、それではゲームの本質が失われてしまう」と述べています。

例えば、『デモンズソウル』や『ダークソウル』シリーズでは、プレイヤーは頻繁に死を迎えますが、その過程で学び、成長し、最終的に困難を克服することが求められます。

この「失敗を通じた学習」というプロセスが、宮崎氏のゲームデザインの重要な要素となっています。

プレイヤーの自由度とオープンワールドの活用

『エルデンリング』では、オープンワールドのデザインを取り入れることで、プレイヤーにより多くの自由を提供しています。宮崎氏は「プレイヤーが窮屈に感じることなく、美しい瞬間を楽しめるようにしたかった」と述べています。この自由度は、プレイヤーが自分のペースでゲームを進め、異なるアプローチを試すことを可能にします​。

また、オープンワールドの設計により、プレイヤーは一つの困難に直面したときに別のエリアに移動して新たな挑戦を見つけることができます。これにより、ゲームの流れが単調になるのを防ぎ、常に新しい発見と挑戦を提供します。

環境デザインとストーリーテリング

宮崎氏のゲームは、環境デザインとストーリーテリングが密接に関連しています。彼のゲームの世界は、プレイヤーが探索することで徐々にその歴史や背景が明らかになるよう設計されています。この「環境ストーリーテリング」の手法により、プレイヤーは自らの発見を通じて物語に深く関わることができます​。

例えば、『ブラッドボーン』では、ビクトリア朝時代のゴシックホラー風の世界が舞台となり、プレイヤーはその世界を探索しながら、隠された真実や恐怖を解き明かしていきます。これにより、プレイヤーは単なる観客ではなく、物語の一部として世界に没入することができます。

持続的な挑戦と成長の哲学

宮崎氏は、フロムソフトウェアの社長として、開発者が失敗を恐れずに実験できる環境を作り出すことを重視しています。彼は、自身のキャリアの初期においても同様の環境で成長したと述べており、若手ディレクターやゲームデザイナーにも同じ経験を提供したいと考えています。

この哲学は、開発チームがリスクを取り、新しいアイデアを試みることを奨励し、結果として革新的で挑戦的なゲームを生み出すことに寄与しています。宮崎氏は「失敗しても、それが世界の終わりではない」と述べ、その精神が開発チームの成長を促しているとしています。

まとめ

宮崎英高氏のゲームデザインは、プレイヤーに対する挑戦と達成感の提供、自由度の高いオープンワールドの設計、環境ストーリーテリングの活用、そして持続的な挑戦と成長の哲学を基盤としています。これらの要素が組み合わさることで、フロムソフトウェアのゲームは他に類を見ない独自の体験を提供し続けています。今後も、彼のゲームデザイン哲学がどのように進化し、新しい冒険を提供するのか、非常に楽しみです。


詳しくはThe Guardianによるインタビュー記事を参照。